あなたの答えは正解です
ナンシー関さんと聞いてピンと来る人はもう少なくなりました。お亡くなりになって21年になるんですね。芸能界をテレビの視聴からニヤリとさせる消しゴム版画家芸能コラムニスト、とでもいうのでしょうか。
彼女がいうには、クイズ番組の人気があるのは、考える喜びや知識を求めているわけではなく、ひたすら正解の快楽を求めているというのである。なるほど、ピンポーンと正解のベルを聞くとなんだかうれしくて、正解の意味はどこかに吹き飛んでいくようです。
最近はやりのユーチューバーの人気の理由は、論破、といって相手を言葉でねじ伏せることが快楽になっているからではないでしょうか。論破されると無性に悔しく、勝ったとされるほうは、快楽で鼻の穴が大きくなってるようです。しかし、勝ったからそれが正しいかどうか、いや、自分が正しいなんてことを言うのは危険な行為であるとの自覚は出てこないでしょう。
中島みゆきさんの歌に、「Nobody Is Right 」という曲があります。
あなたがすべて正しくて、あなた以外は間違いばかり。つらいだろうね、その一日は、嫌いな人しか出会えない、寒いだろうね、その一生は、とある。また、その正しさは気分がいいか、その正しさの勝利が気分いいんじゃないか、という。そして、正しさは道具じゃない、と終わる。
正しさは快楽のためにあるのか、とも言えるかもしれません。論破は楽しみのためにあるのでしょうか。そうであれば、倒錯した楽しみであるでしょう。ナンシーさんの言葉をかみしめてみましょう。正解の快楽を求めることは危ないから、気をつけなさいよ。危ないって、不幸になることです。苦しくなることです。思い当たることはないでしょうか。
釋慈明